それは、一日の疲れを癒そうとゆっくり入浴を楽しんでいた日曜日の深夜のことでした。体を洗い終え、最後に浴槽の栓を抜いた瞬間、私の穏やかな時間は一変しました。本来であれば小気味よい音を立てて吸い込まれていくはずのお湯が、一向に減る気配を見せないのです。それどころか、洗い場の排水口から逆流した水が、見る間に浴室の床を覆い尽くそうとしていました。「お風呂の排水溝つまり」という言葉が頭をよぎり、私は全裸のまま立ち尽くしました。パニックを抑えながら、まずは排水口の蓋を開け、ヘアキャッチャーに溜まった髪の毛を取り除きましたが、状況は一向に改善されません。詰まりは、目に見える場所ではなく、配管のさらに奥深くで起きていることが明白でした。深夜ゆえに業者を呼ぶことも躊躇われ、私は自力での解消を決意しました。まず試したのは、キッチンにあった重曹とクエン酸です。重曹を排水口に山盛りにし、その上からクエン酸を振りかけると、激しく発泡して白い泡が立ち上がりました。この泡が汚れを浮かせてくれるという情報を信じ、祈るような気持ちで待ちましたが、十五分経っても水位は一ミリも下がりませんでした。次に私は、お湯の温度を五十度ほどに設定し、シャワーヘッドを排水口に密着させて、水圧で押し流すことを試みました。しかし、逃げ場を失った水が隙間から噴き出すだけで、かえって浴室が水浸しになるという二次被害を招いてしまいました。絶望に打ちひしがれそうになった時、以前掃除のために購入していたワイヤー式のパイプクリーナーを思い出しました。物置から引っ張り出してきたその細長い金属の棒を、慎重に配管の中へ送り込んでいきました。手応えを探りながら進めること約一メートル、何か柔らかい塊に突き当たった感覚がありました。そこを重点的に回転させながら前後に動かすと、突然「ズボッ」という大きな音とともに、溜まっていた水が渦を巻いて吸い込まれていったのです。あの時の安堵感と達成感は、人生の中でも忘れられないものとなりました。