浴槽にひび割れや変色、錆びなどが見られるようになった時、多くの人は「交換」を考えますが、浴槽の状態や予算によっては、交換以外の「補修」という選択肢も有効です。大掛かりな工事を避け、費用を抑えながら浴槽をきれいに蘇らせる方法がいくつか存在します。最も手軽な方法の一つが、「塗装(コーティング)」です。これは、既存の浴槽の表面に専用の塗料を吹き付けたり、塗ったりしてコーティングを施す方法です。細かい傷や変色をカバーし、新品のような光沢を取り戻すことができます。費用は浴槽の状態にもよりますが、おおよそ8万円から15万円程度が相場となり、交換に比べて安価です。工期も1日から3日程度と短いのが魅力ですが、耐久年数は5年から10年程度で、強くこすると剥がれてしまう可能性がある点には注意が必要です。次に、「浴室リフォームシート(パネル)工法」というものがあります。これは、浴槽の内側に防水性の高い特殊なシートやパネルを貼り付ける方法です。デザインや色のバリエーションが豊富で、浴室のイメージチェンジも可能です。費用は10万円から20万円程度で、こちらも比較的短工期で済みます。ひび割れなどの補修にも対応できますが、複雑な形状の浴槽には施工できない場合があります。そして、既存の浴槽の内側にもう一つ新しい浴槽をはめ込む「カバー工法」という選択肢もあります。断熱性が向上するというメリットもありますが、浴槽が少し狭くなり、費用も20万円以上と高額になる傾向があります。これらの補修方法は、いずれも既存の浴槽を撤去する必要がないため、解体費用や廃材処分費がかからず、工事中の騒音やホコリも最小限に抑えられます。浴槽の劣化状態が比較的軽度で、費用を抑えたい場合には、交換と合わせてこれらの補修方法も検討してみる価値は十分にあります。